Always Railways (2)紅花の里、仙山線高瀬

エンドクレジットが流れる中、静かな席に移ったタエ子はひとところを見つめたまま何か思いつめています。

さなぎのまま、何も変わらないまま東京に帰ってしまいそうな時、5年生のタエ子に腕をひっぱられ、都はるみのしなやかな力強い歌声に背中を押されてタエ子は席を立ちます。次の山寺で列車を乗り換え高瀬に戻り、駅前の公衆電話ボックスからタエ子が電話を掛けたのは泊めてもらっていた家のお母さんでした。「嫁に」と言っていたおばあちゃんでも、将来が暗示されたトシオでもなく、母親に電話を掛けたことにタエ子の決心が見えてきます。挫けるのを恐れている自分を止めて(※1)、もう一度、心からの気持ちで話をして決めたい…。

峠の力餅 山形駅スタンプ赤

写真1 峠の力餅 / 写真2 山形駅スタンプ赤

 

ジブリ作「おもいでぽろぽろ」は鉄道ファンには嬉しい作品かも知れません。地下鉄丸ノ内線の車両の模様はきちんと書かれています。東海道新幹線の広窓の0系、札が下がった上野駅の中央改札も懐かしいと思います。17番ホームに入ったあけぼの3号を引く黒磯からのED75型、しかし、山形駅に入線するときは重連に交替しています。急勾配の板谷峠を越えてきたことが分かります。半ばシルエットになっている2台の電気機関車はともにパンタグラフは一つずつ挙げています。そして床下などきちんと描き分けられています。ちなみに峠の力餅は途中の峠駅で売られています。山形新幹線でも買うことができたと思います。

待合室の椅子で眠りこけていて、あけぼの3号の到着を見落としたトシオが慌てて駅員に声をかけ、まだコンコースにいたタエ子を見つけます。そのとき、改札口の上の時計は3時38分を指し、その表示には奥羽本線、仙山線、左沢線の線名や、急行津軽4時51分青森行、急行出羽5時41分酒田行などのかつての列車名が出ています。長距離の夜行列車が日本中を走っていました。ほんの一瞬の画像ですが、きっちり書き込まれています。

東京に帰るタエ子が見送られて乗る高瀬駅は古い駅舎です。列車交換ができる山寺で乗り換えた普通列車は急行型でした。ホームの様子は今とは違いますが、乗り換えられるところは今も同じです。背景になっていて目立ちませんがここも正確な描写がされています。このあけぼのではハイケンスのセレナーデは流れたのでしょうか。

あれっ、あけぼのは山形を通っていないよ、と思われた方はかなりの鉄道ファンです。あけぼのの経路は変わっています。東日本大震災の際には迂回運転もしています。映画の背景から考え、奥羽本線経由で青森まで行っていたころと思います。タエ子はあけぼの3号のB寝台で何か変わろうとしてする自分を見つめながら山形までの短い眠りにつきました。

5年生のタエ子が分数の割り算ができずに25点を取ってしまいます。なぜ割る数の分子と分母をひっくり返して掛けるのかが理解できずフォークでリンゴを細かく分けていきます(※2)。その場面に流れた曲が倍賞千恵子の「さよならはダンスの後で」。口ずさんでいただけばその訳はわかります。

こんな風に今回は??が多いコラムです。種を仕込んであります。育ててみてください。

 

高瀬は今も紅花で有名なところです。一時は化学染料に押された紅花ですが、自然の風合いが見直されているとのことです。タエ子はこの駅から仙台を経由して東北本線または東北新幹線で東京に戻ろうとしていました。次の山寺で引き返したタエ子はさなぎから蝶になれたのでしょうか・・・。エンディングがヒントです。

(※1) 愛は花、君はその種(THE ROSEより) 歌 都はるみ
(※2) 板橋悟:なぜ分数の割り算はひっくり返すのか? 主婦の友社 2011年  (計算法の理由が分かります)

 

 

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Always Railways
(1)東京駅小景
(2)紅花の里、仙山線高瀬
(3)御茶ノ水散歩
(4)鉄道本の一大集積地と神保町徘徊
(5)寝台急行「はまなす」に乗る函館小旅行
(6)飫肥を周ってJR最南端の駅で開聞岳を見る旅
(7)夕陽と萬代橋の街、柳都新潟
(8)原鉄道模型博物館と鉄道発祥の地、横浜
(9)留萌本線の日、増毛、そして明日萌
(10)新幹線列車名雑感
(11)ホームから海が見える駅
(12)江ノ電で行く海街散歩
(13)ダルマ駅を訪ねて(前編)

 

2014年12月07日 | Posted in 新着情報, 鉄道コラム Always Railways | | No Comments » 

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