Always Railways (6)飫肥(おび)を周ってJR最南端の駅で開聞岳を見る旅

キハ(枕崎駅の車輌)

写真1 キハ(枕崎駅の車輌)

大好きな彼をホームの人ごみの中に見つけ、笑みがこぼれるまま駆け寄ろうとした時、横から彼の左腕に飛びつき体を寄せて話しかける親友の彼女…。一瞬凍りつき、ふたりに気が付かないふりをして回れ右、折からの列車に乗り込みシートにひとり座っている私。ドア近くに乗った二人を見ることができず、二人が降りてもそのまま乗り続け、いつしか列車は郊外へ。降り立った駅は緑に囲まれた誰もいない静かな駅、持ってきたペットボトルから一口飲み、もやもやした気持ちが晴れた笑顔で「水でこんなに違うんだ」と一言。まだあどけなさが残っている女の子の切ない気持ちが伝わってくる某社の清涼飲料のCMです。バックには「ウォーターボーイズ」でも流れたシルヴィ・バルタンの「あなたのとりこ」が軽快に流れました。1)

CMでの好演を見てこの女優さんを好きになった方も多いと思います。当時16歳だったと思います。その後、数多くの映画、ドラマに主演され、さまざまなCMにも登場されています。「ぼくではだめですか」と叫ぶ年下の男の子に「生意気」と可愛くつぶやきウーロン茶を口にするときには少しお姉さんになっていました。2) そんな彼女が降り立った駅はJR九州日南線の伊比井(いびい)です。日南線・飫肥(おび)駅
15秒のCMで東京から南九州まで来てしまいました。この駅は1面2線の島型ホームで、以前賑わった観光施設があるためかしっかりとした駅舎があります。緑に囲まれた静かな無人駅です。彼女が降りた列車は単行のキハで、白い車体に青いラインが鮮やかでした。(写真1) 写真は別の駅に停車している同じ外観の車輛です。

宮崎から日南線で約1時間、伊比井に着きます。そこからさらに20分余のところが九州の小京都、飫肥(おび)です。今回の旅はここから始まります。
泰平踊の像 豫章館 大手門

飫肥の駅舎は城郭を模したような白壁に瓦葺の立派な建物です。駅前には古式ゆかしい踊りの像が建てられています。江戸元禄の頃から伝わる伝統芸能である泰平踊の像です。(写真2) しばらく歩きますと「重要伝統的建造物群保存地区」に入ります。整備された町並みの中を進みますと左手に藩主の屋敷である豫章館、正面に大手門が見えてきます。(写真3)
この地を治めたのは伊東家です。鎌倉時代に地頭に任じられたのが始まりのようです。島津家と争い城を失った時もありましたが、豊臣秀吉に従い戦功を挙げて以来、明治の廃藩置県まで、この地を長く治めたとのことです。往時を偲びながらゆっくりと豫章館やその庭園、そして城の中を散策してください。

椎茸めし宮崎の駅弁で紹介するのは「椎茸めし」です。(写真4)肉厚の椎茸がどんと載っています。その下は錦糸卵と鶏のそぼろ、そして炊き込みご飯です。付け合せは地の野菜にかまぼこ、だし卵、ミートボールなどです。待ち合わせの時間があるか、宮崎の市内観光をされるのであればチキン南蛮もおすすめです。
写真4 椎茸めし

観光列車「指宿のたまて箱」

写真5 車体に“NANOHANA”のと書かれた車輛

鹿児島中央から指宿枕崎線で西大山に向かいます。指宿までは便数も多く、快速「なのはな」だけでなく、観光列車「指宿のたまて箱」も運転されています。車輛の中には菜の花色に染められた車体に「NANOHANA」とローマ字で書かれているものもあります。(写真5)
指宿あるいは隣の山川から先、枕崎までの列車は直通便も含め、日に6便と極端に少なくなります。枕崎まで行くのは指宿発6:09のあとは11:27までありません。事前に十分調べてください。
西大山の入場券温泉で知られている指宿ですが、全国で一番早く市民マラソン大会が開催されるところとしても知られています。「いぶすき菜の花マラソン」、今年は第34回で1月11日に開催されました。優勝はあの公務員ランナーで有名な方でした。マラソンコースからは開聞岳も間近に見られるそうです。この指宿駅に降りられたら窓口で西大山の入場券を購入しましょう。(写真6) 日付も入れていただけます。現地では無人駅のため購入できません。

指宿を出てまもなく西大山につきます。「JR日本最南端の駅」という標識がホームの端に立っています。ちなみに日本最南端の鉄道の駅は沖縄を走っているモノレール、ゆいレールの「赤嶺駅」になります。枕崎線はこの後、やや北に向かうため、JRではこの駅が最南端になります。
私が初めてこの駅に降り立ったのは冬でまだ暗い6時26分でした。青春18切符を見せてひとり降りるときに運転手さんが一言、「ここで降りていいのですか」、と聞いてくださったことを覚えています。周りには何もないころで街灯のようなセンサー付き照明が短時間点いたのを覚えています。すぐ近くの真っ暗なところから獣のような西大山唸り声が断続的に聞こえ、見えるのは遠くの国道?を時折走る車のライトだけで、結構怖い思いをしました。(写真7) ようやく空が白んできて開聞岳のシルエットが美しく浮かび上がってきたときは本当に嬉しかったです。
最近、この駅を訪れた時には駅前の広場はきれいに整備され、手入れされた花壇があり、土産物を売っているのか、かなり大きな店も立っていました。ホームの端の標識は変わっていませんでした。

 

 

 

この西大山はJR最南端の駅というだけでなく、開聞岳のベストビューポイントとしてもお薦めできます。開聞岳は別名薩摩富士とも言われ、均整のとれた美しい山です。JR日本最南端の標識と列車を入れて薩摩富士をカメラにおさめてください。(写真8)この開聞岳がその裾野をいっぱいに広げてみえるのが次の薩摩川尻から東開聞にかけてです。(写真9) 2007年(平成19年)の春に出された青春18切符のポスタをぜひ見てください。下半分が一面の菜の花です。その向こうに稜線をいっぱいに広げた開聞岳が聳え、麓をキハが一輌、つつましく走っています。2010年(平成22年)の夏には、空だけが明るくなった夜明け前(?)の薄暗い中に、列車の前照灯に浮かび上がるレールと、蒼いシルエットになった開聞岳がポスタになっています。ぜひこの美しい薩摩富士に会いに行ってください。

開聞岳1 写真8 開聞岳1

開聞岳2 写真9 開聞岳2

 

時間に余裕がありましたら、西大山から列車を乗り継ぎ枕崎まで行ってください。終着駅ですので車止め標識があります。(写真10) 今では無人になってしまった駅ですが、駅舎はきれいに整備され、観光客のため撮影ポイントにカメラの置台までつくられています。(写真11) 列車は折り返します。戻る方は乗り遅れないようにしてください。枕崎から鹿児島中央に向かう列車は直通と、山川あるいは指宿での乗り継ぎの両方があります。鹿児島中央ら向かって右側の窓際の席を確保してください。錦江湾に浮かぶ桜島がよく見えます。(写真12) 車内も賑やかになりまもなく鹿児島中央です。

枕崎駅1 写真10 枕崎駅1

枕崎駅2 写真11 枕崎駅2

錦江湾に浮かぶ桜島 写真12 桜島

 

1) 某社清涼飲料水のCM1本目「光の中へ」より
2) 某社の別の清涼飲料水のCM「フェイント編」より

 

 

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Always Railways
(1)東京駅小景
(2)紅花の里、仙山線高瀬
(3)御茶ノ水散歩
(4)鉄道本の一大集積地と神保町徘徊
(5)寝台急行「はまなす」に乗る函館小旅行
(6)飫肥を周ってJR最南端の駅で開聞岳を見る旅
(7)夕陽と萬代橋の街、柳都新潟
(8)原鉄道模型博物館と鉄道発祥の地、横浜
(9)留萌本線の日、増毛、そして明日萌
(10)新幹線列車名雑感
(11)ホームから海が見える駅
(12)江ノ電で行く海街散歩
(13)ダルマ駅を訪ねて(前編)

 

2015年04月30日 | Posted in 鉄道コラム Always Railways | | No Comments » 

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