Always Railways (9)留萌本線の日、増毛、そして明日萌

増毛駅のホーム
写真1 増毛駅のホーム

増毛駅前の観光案内所の平成27年今季来場者数が7月18日に1万人を超えたとのことです。前年同期の1.5倍と伝えられています。昨年11月の俳優高倉健さんの死去をきっかけに訪問客が増えたようですが、何より6月の留萌線一部廃線検討報道を受けてさらに来訪者が増えたとのことです。

留萌本線は函館本線の深川と、かつて鰊の水揚げで賑わった増毛を結ぶ66.8km、20駅の全線未電化・単線の路線で、増毛駅は線路の先に車止めの標識が立っている終端駅です。(写真1、写真2)

増毛駅の駅舎
写真2 増毛駅の駅舎

留萌を過ぎると列車は日本海沿いに進み、漁港が見えると間もなく増毛の駅です。ホームの端のスロープを降りたところにしっかりとした平屋の駅舎が建っています。筆者が訪れたのは2014年の4月の金曜日でした。単行のキハに終点の増毛まで乗っていたのは数名でした。札幌、深川、そして明日萌では激しく舞っていた雪も増毛では上がっていたものの、強く冷たい風に巻かれるようにして駅舎に入った記憶があります。(写真3)

増毛の海 写真3 増毛の海

 

駅舎を出てすぐに眼に入るのが旅館富田屋のどっしりとした建物です(今は営業していないと聞きました)。その隣が風待食堂で、今は観光案内所になっています。筆者が訪ねた時は客の少ない平日であったためか昼間でも閉められていました。(写真4、写真5)

旅館富田屋 風待食堂
写真4 旅館富田屋            写真5 風待食堂

映画「駅STATION」(降旗康男監督 東宝)は冬の北海道、それも鉄道が舞台です。増毛の街、この風待食堂、そして赤提灯の桐子は大切な舞台です。
最初は風街食堂です。オリンピックの射撃選手でもある警察官の三上(高倉健)は殺人犯の妹であるすず子(烏丸せつ子)を見張り、上砂川の駅で犯人を逮捕します。その後、故郷の雄冬に戻る途中、増毛で桐子(倍賞千恵子)と出会い、不器用なふたりの恋が芽生えます。雄冬に渡る船が悪天候で欠航しているある日、桐子に誘われふたりは留萌で映画を見ます。孤独なふたりの歯車がゆっくりと噛み合いはじめます。ふたりが結ばれたとき、画面には風に羽根が震えるつがいのかもめが大きく映され、それは無数のかもめとなっていきます。「増毛」、それはカモメの多いところ、という意味だそうです。
警察官を辞めて桐子と暮らすことも思い描きながら札幌に戻る三上を増毛の駅に送りながら、「一緒について行ってしまおうか」という桐子に、「いいよ」と答える三上、そんなふたりの仲も桐子の以前の恋人であった殺人犯を三上が射殺することで壊れ、指の間からこぼれ落ちていきます。
赤提灯の桐子でふたりが出会った時にカウンターのテレビから八代亜紀の「舟唄」が流れます。三上と会う時の桐子の華やいだ顔が切なく、そして美しく可愛いです。そして、別れを告げるために三上がここに立ち寄った時も、「舟唄」が流れていました。
この映画は別れの映画です。駅はその舞台です。大切な別れから始まります。雪が舞う銭函駅で妻の直子(いしだあゆみ)が幼い息子を連れ旅立ちます。三上を忘れられない直子が動き始めた客車列車のデッキで手すりに掴まって、泣き笑い顔で敬礼します。この別れが全編を通奏低音のように流れているように筆者には思えます。固すぎる、不器用すぎる三上を思わず恨みに思ってしまうほど切なく美しい直子です。

 

深川と留萌のちょうど中間あたりに恵比島の駅があります。 「明日萌」という名前で記憶されてみえる方も多いと思います。1999年に放送されたNHK連続テレビ小説「すずらん」の舞台で、架空の駅名です。この駅で駅長に拾われた「萌」が逆境に負けることなく成長していく物語です。
ドラマの撮影のために建てられたセットの駅舎がいまも保存されています。(写真6、写真7) 小振りな建物ですが存在感があり、本物と見間違えます。

雪の明日萌 写真6 雪の明日萌

明日萌のセットの駅舎 写真7 明日萌のセットの駅舎

駅舎の中には萌と養父の駅長の実寸大の人形が置かれ、駅の表示板などもそのまま残されています。萌は待合室の長椅子に掛け、駅長は部屋で執務しています。いつもは鍵がかけられていて外からガラス越しに見ることしかできませんが、来客の多いときには中に入ることができるようです(写真8、写真9)。

写真8 明日萌駅の駅長の人形         写真9 明日萌駅の萌の人形
明日萌駅の駅長の人形 明日萌駅の萌の人形

 

駅前の通りを挟んだ角に「中村旅館」があります(写真10) 。これもロケのための建物で保存されているものです。私が訪ねた時はたまたま管理されている人がみえ、中でいろいろお話を伺うことができました。

セットの中村旅館 写真10 セットの中村旅館

本当の恵比島駅は明日萌駅のすぐ隣にあります。通称ダルマ駅と言われるもので、緩急車を利用した駅舎です。こうした駅舎は老朽化のため減りつつありますが、北海道を中心にまだかなり残されています。この留萌本線にもいくつかあります。中は簡素な造りです。(写真11、写真12)

恵比島駅  写真11 恵比島駅

恵比島駅舎の内部 写真12 恵比島駅舎内部

 

北海道では先ごろ江差線の木古内・江差間が廃線となりました。留萌線の一部廃線はこれから検討されるところですが、数年ののち、あるいはそれより早く変わっていくのかも知れません。増毛も明日萌も留萌本線に乗って訪れていただきたいところです。札幌から旭川方面に行かれる時など、列車の時間に十分気を付けて、深川から足を延ばしてみてください。

増毛駅スタンプ1 増毛駅スタンプ2

写真13 増毛駅スタンプ1          写真14 増毛駅スタンプ2

 

 

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Always Railways
(1)東京駅小景
(2)紅花の里、仙山線高瀬
(3)御茶ノ水散歩
(4)鉄道本の一大集積地と神保町徘徊
(5)寝台急行「はまなす」に乗る函館小旅行
(6)飫肥を周ってJR最南端の駅で開聞岳を見る旅
(7)夕陽と萬代橋の街、柳都新潟
(8)原鉄道模型博物館と鉄道発祥の地、横浜
(9)留萌本線の日、増毛、そして明日萌
(10)新幹線列車名雑感
(11)ホームから海が見える駅
(12)江ノ電で行く海街散歩
(13)ダルマ駅を訪ねて(前編)

 

2015年09月29日 | Posted in 鉄道コラム Always Railways | | No Comments » 

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