Always Railways (10)新幹線列車名雑感

大判の時刻表で特急運転系統図を久し振りに見ていたところ、新幹線の列車名が多くなっていることに愕然としました。1) 北陸新幹線も開業し当然列車名も増えていることはわかっていましたが、数えてみると20もの数に上り認識を新たにしたところです。「今頃何言ってるの」と新幹線ファンの子どもから笑われそうな不甲斐なさでした。

筆者の中では新幹線は「ひかり」と「こだま」、後になって「のぞみ」が加わった、という印象が強いのです。東北新幹線も開業し列車名が増えたことは知っていましたが、さきの3つの名称が新幹線の列車名として自分の中に定着していた結果です。

北から路線別に列挙しますと、「はやぶさ、はやて、やまびこ、なすの(東北新幹線)」、「つばさ(山形新幹線)」、「こまち(秋田新幹線)」、「とき、Maxとき、たにがわ、Maxたにがわ(上越新幹線)」、「あさま、かがやき、はくたか、つるぎ(北陸新幹線)」、「のぞみ、ひかり、こだま(東海道・山陽道新幹線)」、「みずほ、さくら、つばめ(九州新幹線)」です。(一部路線は重複します) 東海道新幹線が開業したのは1964年です。走っていたのは「ひかり」と「こだま」だけでした。52年経った今、その10倍もの名前の新幹線の列車が毎日、日本列島を駆け巡っています。

東海道新幹線開業当時、東京・新大阪間で名古屋と京都のみに停車する速達型が「ひかり」で、各駅停車型が「こだま」でした。「ひかり」の名称は開業に先立ち公募で選ばれました。この「ひかり」という名称の列車は過去にもありました。

1933年(昭和8年)に朝鮮と満州を結び釜山・奉天間(その後、延長)に登場した急行列車のひとつが「ひかり」でした。蒸気機関車が牽引する6両編成の列車で食堂車、寝台車や展望車を連結した列車だったとのことです。「ひかり」は終戦まで走っていました。2)3)4)

戦後は九州を走る準急・急行列車の名称として活躍しました。博多・別府間の臨時急行として新設されるとまもなく定期列車となり運転区間も大分・熊本まで延長されました。その後、準急に変更されたりなどの変遷を経て、新幹線にその名称を譲りました。在来線は「にちりん」や「くさせんり」に引継がれました。

「のぞみ」も朝鮮と満州を結んだ急行列車でした。その後、一度は消えた名称ですが、あらたに新幹線列車の名称として登場しました。2)3)4)

一方、「こだま」は1958年(昭和33年)、東京・大阪間のビジネス特急の名称として公募によって決められ、東海道新幹線の開業とともに、その列車名に引継がれました。3)

新しい名称が生まれ続ける一方、いつの間にか消えていった名称もあります。「あさひ」と「あおば」です。「あさひ」は上越新幹線、「あおば」は東北新幹線を走った列車の名称です。「あさひ」は1960年(昭和35年)、仙台・新潟間を走る準急の名称として登場しました。上越新幹線の列車名に引継がれましたが、名称の整理の中で消えていきました。また、「あおば」は1947年(昭和22年)、上野・仙台間の急行「青葉」として登場しました。その後、幾多の変遷を経て東北新幹線の列車名に引継がれました。しかし、「なすの」にその役目を引継ぎ消えていきました。

一度、消えたものの復活した名称が「とき」です。上越新幹線の速達型が「あさひ」、各駅停車型が「とき」でした。その後、上越新幹線の列車名が「あさひ」と「たにがわ」にまとめられた際に一度「とき」の名称は消えました。しかし、「あさひ」の名称は、「とき」の消滅時期に合わせるように登場した北陸新幹線の「あさま」の名称と紛らわしく、誤乗車が多発したようです。2002年(平成14年)、「あさひ」が「とき」に変更され、新潟に縁の深い名称が復活しました。

 

大勢の人を速く運ぶ鉄道としての印象が強いためか、出会いや別れの場面に登場することが少なかった新幹線ですが、それを一変させたのがJR東海のCM「シンデレラエクスプレス」でした。駅は出会いの場であり、別れの場でした。前回のコラムで紹介した映画「駅STATION」では冒頭の銭函駅から別れが迫ってきました。新幹線ではそのような場面は忘れられていたように思います。そんな中で、新幹線はただ人を運ぶだけではなく、そこには出会いと別れがある、ということを強く訴えたのがこのCMだと思います。

午後8時30分東京発、新大阪行き最終ひかりは、週末を共に過ごした遠距離恋愛のカップルが別れを惜しむ列車でした。ドキュメンタリー「シンデレラ・エクスプレス―48時間の恋人たち」が放送されたのは1985年でした。ユーミンこと松任谷由美の曲が流れました。5) その後にJR東海のCM「シンデレラ・エクスプレス」が放映されました。

『離れ離れに暮らす恋人たちが、』5) で始まるコピーが流れたCMを記憶されてみえる人も多いと思います。筆者がもっとも記憶に残っているのは女優のMさんの出演されたCMです。山下達郎の音楽が流れる中、名古屋駅の広いコンコースを花束と贈り物を抱えて彼女が走っています。前から来た人に体があたり花束が飛びます。ひとこと言いたげに立っている男の人にきちんと一礼し、花束を拾って新幹線改札口に彼女は急ぎます。折しも入線した列車から彼が降り立ちます。改札を通る人の群れに目を凝らし彼を探している彼女、その端に彼が映ると最高の笑顔が浮かべ、それでも柱の影に身を寄せます。

その前年だったと思います。女優のFさんが演じられました。名古屋駅のホームに立つ彼女は列車から降りてくる人たちの中に彼を探します。人並みが去り、ホームにぽつんとひとり残された彼女。目尻から涙が滲みます。そんなとき贈り物で顔を隠したまま踊る男性がホームの柱の影から出てきます。拗ねている彼女、そんな彼女を後ろから抱え大きく回す彼。

ちなみにこの女優Fさんが主演された映画に「ハル」があります。パソコン通信で交際を深めた二人が初めて「会う」のが東北新幹線だったと思います。列車の中の彼と、車から出てその列車を見送る彼女。その場面が切り取られて鮮烈に覚えています。

九州新幹線のCMが話題になったのはまた記憶に新しいと思います。東日本大震災で一時放送が延期されましたが、沿線のたくさんの人たちが一人一人の工夫を凝らして参加され明るく楽しいのにジーンとくるCMでした。

どれも新幹線の中に人が息づいている、そんなCMだったと思います。

ネットで調べますとさらにいろいろなバージョンが見つかりました。懐かしい二階建ての100系グランドひかり、以前の名古屋駅の駅舎の大時計、さらには駅員さんが立ってみえた改札口などなど、皆さんもぜひ一度探してみてください。

 

JR東日本のオリジナル懐中時計
写真1(左)JR東日本のオリジナル懐中時計、写真2(右)同裏面

2008年3月まで「JR東日本発足20周年謝恩新幹線スタンプラリー」がJR東日本により実施されました。このラリーの最終回ではJR東日本の新幹線6エリアに乗車し指定のスタンプを集めますと「オリジナル懐中時計」が、3エリア達成で「はやてアラームクロック」が抽選であたりました。写真1(上・左)はその懐中時計です。写真2(上・右)のように裏には新幹線のイラストが刻印されていました。筆者が経験したスタンプラリーの賞品の中では破格の豪華でした。

2007年に飯田線の70周年を記念して「飯田線スタンプラリー」がJR東海により開催されました。実施期間は2ヶ月余のやや短い期間に指定の18駅のスタンプを集めるものです。写真3はそのスタンプを押した応募用紙です。意外と乗り継ぎにくい駅なども指定されていてやや苦労した記憶があります。

写真3 指定の全駅スタンプを押印したスタンプラリー専用用紙
スタンプラリー専用台紙

 

缶バッチ写真4は全スタンプを集めていただいた缶バッチです。記念品の豪華さは異なりますが、懐中時計も缶バッチもどちらも大切な記念品です。

 

写真4 缶バッチ

 

 

富士山
写真5 山側の席(D席)から見える富士山

東海道新幹線で筆者が一番気に入っている景色は富士川を渡るときの富士山です(写真5)。秀麗な姿にはなかなか会うことができませんが、見られたときの感激はひとしおです。新富士駅を過ぎてまもなく全景が見られるところがあります。新幹線から見る富士山の撮影ポイントかと思います。富士山は天候さえ良ければ東海道新幹線の静岡から小田原の間であればかなりの確率で見ることができます。珍しいのは海側の席であるA席から見える富士です。空気が澄んだ見通しのいい時、静岡駅の手前で短い時間見ることができます。山側の富士だけでなく、海側の富士も見つけてください。

北海道新幹線の開業も間近です。これからも新幹線の列車名は増えていくように思います。その一方で消えていく名称もあります。在来線の特急列車も消えていきます。そんな列車を時々は思い出していただければと思います。

 

 

1) JTB時刻表 2015年8月号 JTBパブリッシング
2) 曽田英夫:幻の時刻表, 光文社文庫 2014年
3) 寺本光照:列車名大事典 中央書院 2011年
4) 佐藤篁之:「満鉄」という鉄道会社 交通新聞社 2011年
5) 近藤正高:新幹線と日本の半世紀 交通新聞社 2010年

参考資料
1) 所澤秀樹:「快速」と「準急」はどちらが速い? 光文社 2015年
2) Wikipedia

 

 

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Always Railways
(1)東京駅小景
(2)紅花の里、仙山線高瀬
(3)御茶ノ水散歩
(4)鉄道本の一大集積地と神保町徘徊
(5)寝台急行「はまなす」に乗る函館小旅行
(6)飫肥を周ってJR最南端の駅で開聞岳を見る旅
(7)夕陽と萬代橋の街、柳都新潟
(8)原鉄道模型博物館と鉄道発祥の地、横浜
(9)留萌本線の日、増毛、そして明日萌
(10)新幹線列車名雑感
(11)ホームから海が見える駅
(12)江ノ電で行く海街散歩
(13)ダルマ駅を訪ねて(前編)

 

2015年12月25日 | Posted in 新着情報, 鉄道コラム Always Railways | | No Comments » 

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